テレビではわからない江戸時代の女性の姿
江戸時代の女性の普段の姿は現在のテレビあるいは映画では全く分かりません。
現代の我々が時代劇を見た場合、違和感を抱かないようにいろいろな場面で現代風にアレンジしているのです。
男の人についても言えるかもしれませんが特に女性のファッション、いで立ちなどかなりの部分で江戸時代とは違う格好をしています。
この女性の場合着物の丈が足首の所までですが手を見てください、これは着物を摘まんでいるのです。
決して前で手を合わせているのではありません。
女性がちょっと外に出る時の姿です。
現代の着物姿は着物の裾が花嫁衣装や芸者さん、舞妓さんではない限り足首までしかありません。
テレビの中の江戸時代の女性たちもそれに合わせて(現代に合わせて)丈の短い着物を着ています。
しかも着こなし方まで現代風です。
上の絵の女性が摘まんでいる手を離したら着物が垂れて足全体が隠れる長さになります。
足首までの短い着物を着ているのはせいぜい百姓の女か、下女とか動きの激しい職業の人くらいで、おそらく小間物売りの女性でさえ一見短く見える着物は大体たくし上げて帯に挟んでいるというのが本当の所だと思います。
浮世絵をよく見ると江戸の女性たちは家の中では着物の裾が畳に擦れて歩いています。
足先は着物の裾が左右に割れそこから覗いています。
そして色っぽいことに中に来ている襦袢、下着が見えています。
一見だらしないように見えますがこれが江戸時代の女性の着物の着こなしなのです。
花見の浮世絵の中に出てくる女性たちも同じです。
外ですから裾が汚れないようたくし上げて歩いています。
テレビドラマや映画ではなぜ最初から短い現代風にしてしまうのでしょう。
現代の着物の着こなしは礼服から来ているという人もいます。
つまりキチンとしすぎて堅苦しい訳です。
エンドタイトルには時代考証の担当さんの名前(学者さんだったりして)がたいてい出ていますが担当さんは気にならないのでしょうか。
もう一つ現代人と江戸時代の女性ファッションの違いは「鉄漿(オハグロ)」です。
結婚して奥さんになった女性は鉄漿をするはずです。
専業主婦ならまずそうなるでしょう。
眉も剃る。
テレビドラマ「仁」の中のお母さんは着物や鉄漿はダメでしたが眉だけは剃っていたような気がします。
現在放映している「立花登青春手控え2」の中のお母さん(宮崎美子)は長い着物、鉄漿、眉剃りどれもしていません。
あと吉原の花魁は眉は剃らないけど鉄漿はしています。
吉原の花魁と遊ぶときは疑似結婚という形をとるものだから鉄漿をするのです。
なにせ江戸時代の女性ファッションは現代の着物よりはるかに色っぽく、ファッショナブルで下着見せファッションだったのです。
胸元ももっとゆったりと現代の着こなしよりもっと緩やかで楽な着こなし方だったはずです。
誰か監督さん!!もっと江戸時代の女性に迫った時代考証に沿ったドラマや映画を撮りませんかね。
現代は長い着物を着ずに鉄漿もしないけど、映画やドラマの中の江戸時代ではちゃんとその恰好をしている、その姿も見慣れれば江戸時代ももっと理解しやすくなるのではないでしょうか。