江戸の水事情
山本一力の小説に「あかね空」「道三掘りのさくら」という小説があります。
「あかね空」は2002年に直木賞を取りました。
「道三掘りのさくら」は2005年の作品です。
わたしは「あかね空」の方は読んでないのですが映画は見ました。
この「あかね空」「道三掘りのさくら」に共通したテーマみたいなものがあって、それが”水”なんです。
「あかね空」はお豆腐屋さんの話です。
そして「道三掘りのさくら」のほうは水売りやさんの話なのです。
この2つの小説の舞台は両方とも本所、深川近辺になります。
富岡八幡宮とかお話の中に出てきます。
気になったのはかたや深川の豆腐屋さんの話です。
そしてかたや江戸城の堀に繋がる道三掘りにある「吐き樋」と呼ばれる水道の余り水を吐き出す場所から樽に水を汲んで深川一帯に売り歩く水売りの話です。
当時の江戸には神田上水や多摩川の上流から江戸まで水を引いた玉川上水とかがあって飲み水を確保するために世界に誇る上水道というものがあったのです。
この上の絵の女性のように井戸から汲んでいる水は各長屋や家にひかれた水道の水と言う事になります。
ただし、大川(隅田川)の西側ではと言う事なのです。
残念ながら現在の墨田川よりずっと広い大川を超えるだけの水道橋を作る技術は当時ありませんでした。
ですから大川を越えた深川一帯に公儀が作った水道はなかったのです。
神田川を超える水道の橋はありました。
それが今の水道橋の語源になっています。
しかし、深川一帯はほとんどが大川の湿地帯を埋め立てた埋立地なものですから井戸を掘っても出てくるのは塩水でまともな飲み水が出る井戸はほとんどなかったと言われています。
ですから深川の長屋にある井戸の水は洗濯などに使い、飲み水は水売りから買ったというのが「道三掘りのさくら」の話しなのです。
ただ「あかね空」のお豆腐屋さんは深川です。
深川で美味しい井戸水に出会えたというのが話の始まりですからなにか違和感を感じるのですよ。
やっぱり映画ではなくて小説を読んでみないと比較はできないでしょうか。
同じ作者ですからその違いをどう説明するか改めて確認したいと思います。
えぇ~深川に美味しい水なんてあるのですか?って。